ことばでつなぐ、
手しごとと暮らし
使う人の暮らしを想い、丁寧につくられた道具や手しごと。
その背景にある思いや価値を、暮らしの言葉で届けていく——それが文章設計事務所の仕事です。
この仕事の原点には、僕自身の体験があります。
かつて、家具職人として働いていたことがあります。
職人の世界は厳しくも、どこか温かく、
尊敬するお師匠さんに「根性ある」と言ってもらえたことは、今でも大きな支えです。
当時の僕は、つくることに夢中で、
それが誰かに見てもらえているとは思ってもいませんでした。
けれど、確かに見ていてくれる人がいた
――そのことが、自分の努力を信じるきっかけになりました。
その後、会社の広報を担当するようになり、
はじめて「伝えること」の難しさに向き合うことになります。
職人たちが当たり前に語っていた言葉が、
外の人にはなかなか伝わらない。
業界用語も、感覚も、ずっとそばにいるからこそ見えなくなっていたことばかりでした。
それでも、丁寧に言葉を探して、ひとつひとつ整えていくうちに、
少しずつ、想いが伝わる手ごたえを感じられるようになりました。
「安心して家具が買える」
「一生使えそう」
そんな声を聞いたときのうれしさは、今でも忘れられません。
その会社は、いまはもうありません。
でも、僕にとってその場所は「ものづくりの心」を教えてくれた、大切なふるさとです。
だからこそ、今、僕がやりたいことは、
ひたむきにものづくりを続ける人たちと、ずっと続く未来をつくること。
想いを言葉にすることで、使う人とつくる人を結び、
ものも心も、すこやかに満たされる暮らしにつなげていきたい。
失われてしまったあの工房の灯りのようなものを、
これからの言葉の中に、小さくとも灯していけたらと思っています。
仕事のかたち
取材を通して職人の声を聞き、伝えたい思いを掘り起こし、読み手の暮らしに届くことばへと編み直す。
コピーライティングやインタビュー記事、Webや紙ものの文章設計まで、幅広く手がけています。
僕たちが目指すもの
ものがつくられ、使われ、愛着が生まれ、やがて暮らしに溶け込んでいく。
そんな循環の中に、手しごとがきちんと根づいていく未来をつくりたい。
かつて働いていた家具メーカーで、僕は「つくる」ことの厳しさと喜び、
そして、「伝える」ことのむずかしさとやりがいを知りました。
その会社はいま、もうありません。
けれど、そこで感じたまなざしや、伝えたいと思った想いは、今も僕の中に生き続けています。
だからこそ、これからは、
ひたむきにものづくりを続ける人たちの声を言葉にし、
心からモノを大切にしたい人たちのもとへ届けていきたい。
ものも心も、すこやかに満たされた暮らしが、
当たり前のようにそこにある。
そんな未来を、言葉で少しずつかたちにしていきます。
いつもこんな気持ちで
- 「言葉に、手のぬくもりを。」
- 「急がず、でも丁寧に。」
- 「暮らしのとなりに置いてもらえる言葉を。」
- 「職人のことばに、静かな輪郭を。」
書き手について
林 孝治(はやし こうじ)/文章設計士
北海道・旭川市在住。
父は鉄工所の職人。僕自身も、かつては家具職人として働いていました。
学生時代には管楽器の修理を学び、「ものを見つめ、手を動かす」時間を大切にしてきました。
その後、企業広報やライター/編集者としての経験を経て、
2016年9月に「文章設計事務所」を開業。
職人や作り手の声をていねいに聞き、
使う人の暮らしに届く言葉へと“翻訳する”ような仕事をしています。
僕が目指すのは、ただ文章を書くのではなく、
言葉の温度や居場所を、ひとつひとつ設計していくこと。
静かに、長く、心に残る言葉を届けたいと思っています。